Traktorの新機能を用いて多様性に富んだプレイをものにする『StemsとRemix Deck』

前回で触れたような「自動シンクやハーモニック・キー・ミキシングなどの便利な先端機能を用いた場合に陥りやすいプレイの退屈さ」を克服するにはどんな手段があるのでしょう?

Traktorが新しい解決法を提案しています。

Traktorの新機能を用いて多様性に富んだプレイをものにする

前回示したような旧来型の解決法、テンポやリズムの全く異なる曲を新たな局面の展開に使う方法とは別に、Traktorの新機能である「Stems」や「Remix Deck」(※)を上手く使うことで、また違った解決が可能となりそうです。

いや、裏を返せば「Stems」や「Remix Deck」はその退屈さの克服のためにあると言っても良いかもしれません。

※「Remix Deck」は登場してやや時間が経ちましたが、従来のトラック同士を純粋にミックスしていくスタイルとはだいぶ異なっているので、ここでは新しい方法に含めています。

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Remix Deckとは?

まず、Remix Deckとは端的に言うと、ビートシンクされた4小節や8小節などのループ素材やワンショット音源を、DJが即興で組み合わせて演奏していく方法です。

従来のDJは、一つ一つの曲の選択と、その局同士のミックス時のハーモニー、展開などを魅せることによってオリジナリティーのある表現をしてきたと言えます。(時には、FXやフィルタ、EQなどを駆使して音に彩りを加えることも大切ですね。)

Remix Deckを使用したプレイでは、4小節や8小節の「ループ」と呼ばれるミニマルな細切れを一つの単位として扱います。

Remix Deckの演奏法は、複数の「ループ」を組み合わせて表現をしていく方法です。

この方法は、4ビートや8ビートと呼ばれるハウスやテクノなどの規則性のあるダンスミュージックに適しています。

ほとんどのダンスミュージックには規則性があるので、Remix Deckを用いれば、ループ素材を重ねたり、繋いだり、まるでパズルのようにして自由に即興でフローを作成していくことができます。

ループは自動でビートが同期されますので、演奏者がループ同士のピッチ合わせに気を配る必要はありません。

元々この方法は、Ableton Liveのセッションビューを使用した方法が得意とする演奏法ですが、Traktorもここ数年で(F1、D2、S8などの)専用コントローラーとのコンビネーションなどの独自な進化を遂げ、より扱いやすい機能に成長しました。

Native Instruments社(以降、NI)のTraktor Remix Deckのデモンストレーション動画。短い動画ですが、Remix Deckがどういうものかイメージしやすいと思います。

 
 
こちらは、もう少し長めの動画ですが、Kontrol S2+F1x2でRemix  Deckを使ったデモンストレーション。

 

 

 

また、TraktorのHot CUEのジャンプ機能とループ機能の組み合わせたテクニックも、Remix Deckと若干似たところがあります。しかし実は、Hot CUEのジャンプ機能の方が昔からある機能です。

 

曲の任意の地点にHot Cueをループ単位で仕込んでおくと、曲を再生中に、飛びたいCueポイントを押せば、その地点のループが(その前にかかっていた音のテンポに合わせて違和感なくシームレスに)即再生されます。

 

Cueを押して演奏していくCueジャグリングというこの演奏法は、RemixDeckの原型と考える事も出来ます。

 

 

 

このように、一つの曲をDJが独自に分解して、ループ素材として細切れの単位にして使用することで、そのDJだけのオリジナルの表現になりえるわけです。

また、RemixDeck用途に最適化されたループ素材のセットをTaktorのサイトや製作者から入手する事も可能です。

このループ素材を重ねていく演奏法は、元来トラックメイキング(サンプリングなど)的手法に近いものと言えます。柔軟で即興性に富んだこのプレイ方法は、現代的なデジタルDJingの最重要なテクニックの一つになっています。

Remix Deckでは自動的にビートが同期されたループ素材に、多様なFXやフィルターをかけて音を変化さたり、キーを変える事も可能です。

 

ジョグホイール搭載のS4などを使用している場合は、その素材にスクラッチをかける事も出来ます。

Remix Deckでは、最大で64個ものループ音源を同時に鳴らすことができます。

 

このRemixDeckのみでDJプレイをすることも可能ですが、Traktorでは従来の一曲単位のトラックとのシームレスなミックスのセットアップも得意なので、その時々で多種多様な変化にとんだプレイが可能です。

Stems

Stemsは、トラックメーカー(プロデューサー)が、Stems用の素材として作成したフォーマット音源を使わなければなりませんが、何ができるのかというと、

(Native Instrumentsの公式の説明がすべてを物語っていて分かりやすいの引用させてもらうと、)

StemsはDJにとって全く新しいスタイルになります。

Stemsは新しい音楽フォーマットであり、 Stemsはクリエイティブなライブパフォーマンスのあり方を再定義します。

Stemファイルはオープン・フォーマットかつマルチ・チャンネルのオーディオファイルで、例えばベース・ドラム・ボーカル・メロディといったよう に、1 つのファイルの中に4つのパートが含まれています。

各要素に対してそれぞれの操作を行えるので、今まで不可能だったミックス手法も可能になるのです。

もうここまで来るとある意味、DAWでのリミックス作業をDJプレイという枠の中で即興でやってしまうという感じでしょう。

一つの曲の中の各要素が独立して加工可能となり、それら各要素を出したり、隠したり(または音量を上げたり下げたり)、また、その各要素単位にフィルターやエフェクトをかけたりして、独自のオリジナリティーのあるフローを作ってくことが可能になります。

Stems(音源)を使えば、各パート(要素)が独立しているので、従来の3バンドEQによる音域レベルでのアイソレーションとは比較にならないクリーンなミキシングが可能になるでしょう。

また、StemsはPC上のTraktorの表示スペースでは収まりきらないほどの情報量があるので、(Stems対応のコントローラには)コントローラー側にStems専用のディスプレイが搭載されています。

ただし、従来からあるKontrol F1にはディスプレイは付いていません。下の動画が、F1を使用したStemsの操作風景。これもまあまあ使いやすそうですね。

Native Instruments 4チャンネルDJシステム TRAKTOR KONTROL S4 MK2

定番のS4はやっぱり使いやすい

Native Instruments DJコントローラ TRAKTOR KONTROL F1 - NEW

F1は前と比べて安くなりました。

このStemsフォーマットの音源は、すでにBeatportなどのオンライン音楽配信業者がサポートを開始しています。

これら「Stems」や「Remix Deck」はDJがオリジナリティーを発揮するための素晴らしい道具となりえますが、一曲一曲をつないでいくプレイとは比較にならないほど、DJ自身の資質が問われるセンシティブなプレイ方法と言えるでしょう。

次回は、StemsとRemix Deckを自在に操るのための新しいインターフェイス「Traktor Kontrol S5」のついて考察していきます。

次回:

StemsとRemix Deckを導入するなら、Traktor Kontrol S5は意外とアリかもしれない

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