今回は、DJをやってる人なら一度は買うべきか迷うことになるであろう、DJミキシング支援アプリ「Mixed in Key」の情報です。
このソフトが何かをすごく簡単に言うと、
DJが今フロアでかけている曲と違和感無しに混ぜやすい曲を見つけるためのソフトです。
そのために「キー検出機能」と言うものを使うのですが、実は(メジャーなDJ ソフトウェアの)TraktorやSeratoにもこの「キー検出機能」は装備されています。しかしどちらも誤検出が少なくない。
米国の人気DJ情報サイトのDJTECHTOOLSが、各ソフトの「キー検出機能」の精度のテストを毎年行っていますが、
他のソフトと比較すると、このMixed in Keyが、どのジャンルでも常にダントツの精度を誇っています。
正確なDJミックスを「キー検出機能」を用いて行いたいなら、Mixed in Keyを利用する方法が、一番無難な選択だと思います。
今日、Mixed in keyは幅広いジャンルのプロフェッショナルDJに人気のある定番的なツールとなっています。
特に、欧米のEDM系DJの間では、すでに定番と化していますね。
しかし、若干強気な価格設定なので買うか買わずか迷っている方も多いと思います。
考え方によっては6000円は安い買い物ではないかもしれません。
とはいえ、私個人の意見としては、正確なキー検出機能は相当便利なものだし、一度購入してしまえば長く使っていけるので、6000円は特に問題を感じる価格ではないと思っています。
Mixed in keyとは?
当ブログに検索で到達された方なら、TraktorやSeratoなどのPCDJソフトの使用者か、もしくはこれからそれらのDJソフトを使ってDJを始めてみようという方が多いと思います。
Traktorなどのオート・シンク(テンポやビートの同期)機能が搭載されているソフトを使えば、従来のターンテブルやCDJでプレイするのと比べ、だいぶ楽ができてしまいます。
近年、オート・シンクに代表されるPCDJソフトの独占的機能は、プロフェッショナルなDJにとっても便利なツールとして受け入れられています。
個人的には、集中力の欠きやすい長時間のプレイや曲同士を長いスパンで重ねるときなどにはありがたい機能です。
しかし、曲同士のテンポやビートがガッツリとシンクして(合って)も、それだけでは全体的な混ざり具合はイマイチなことの方が多いはずです。
それは、曲同士の「キー」(調)のハーモニーが上手くいっていないことが、第一の原因として考えられます。
「キー」は作曲やミキシングをする上でも、非常に重要な音楽理論の一部です。
「キー」とは何であるかを(DJ向きに超ざっくりと言うと)
「曲の持っている主要な「性格」を理論的に分類化したもの」と言えます。
DTMを始めたての頃、音楽理論になじみのなかった私のような者には少々難解な事柄でしたが、キーの原理を理解して、その法則を適切に利用できれば、劇的に気持ちの良いミックスを作ることができます。
Mixed in keyは、その気持ちの良いミックス作る手助けをしてくれます。
と言うか、もっとハッキリ言ってしまうと、
上記のような音楽理論などすっ飛ばして、今かけている曲にベストマッチする曲を(見つけ出す手がかりを)提示してくれるのが「Mixed in key」と言うソフトです。
使い方はいたって簡単なのに、導入するだけでDJが上手くなってしまった錯覚を抱くかも。
正直これは、ちょっと前ならDJ的には禁じ手に近い事だったかもしれません。
Mixed in keyの具体的な設定方法と使い方:
Mixed in Keyの利点
「Mixed in key」の主要機能では、「キー」をどのソフトよりも正確に検出し、またその少々複雑な「キー」の情報を簡略化してDJに提示してくれます。
➕
この2つが、Mixed in keyの凄いところ。
Mixed in keyの基本的な利用法
Mixed in keyに、あなたの持っている曲を分析にかけると、そのMP3などの音楽ファイルにキー情報を書き込んでくれます。
キーの種類は、12段階で、またその1段階にそれぞれAとBがあります。ゆえに、1A、1B〜12A、12Bまでの24通りのキーがあることになります。
下の図を見てみてください。Mixed In Keyを利用するためのキー・チャート(五度譜、Camelot Wheel、Circle of Fifthなどと呼びます)です。
例えば、「12B」の曲がフロアでかかっていて、次の曲を選ぶ場合、スムースにミックスしやすい曲のキーは、「12A」と「11B」と「1B」の3つ。それと同じキーである「12B」の計4つとなります。
現在の曲のキーの「横」と「縦」に隣接するキーの曲が、ミックスに適していると覚えれば基本的に間違いありません。
応用テクニックとして、エナジーブーストという方法もあります。
「12B」から一列抜かして「10B」や「2B」に飛ぶという選曲法です。この方法では、不協和音が発生する場合もあるので、ご自分で最適解を探しながら導入してみてください。
TraktorやSerato、itunesとの連携
TraktorやSerato、itunesとの連携もしっかり考えられています。(それ以外にも、Ableton LiveとパイオニアDJのrekordboxとの連携機能も標準装備されています。)
Mixed in keyを使えば、「簡単に」、「一瞬で」、相性の良い曲同士を見つけ出すことができます。
Mixed in keyで曲を分析後、自動的に、TraktorやSeratoそしてitunesに、その曲の「キー情報」や「エナジー情報」が書き込まれます。
traktorの場合は、コメント・タグに情報が書き込まれます。
こんな感じ。
⬇︎
itunesの場合は、コメント・タグとグループ・タグに書き込むことができます。
Mixed in keyを用いて、相性の良い曲同士を混ぜ合わせると、違和感のない気持ちが良いミックスがつくりやすくなります。
そのハーモニーの気持ち良さは、一度経験すると病み付きになると思いますよ。
DJプレイで、気持ち良いハーモニーを作り出すのはDJの特権。
Mixed in keyは、その気持ち良いハーモニーを、いとも簡単に作り出す情報を、DJに(簡潔に)与えてくれます。
キー検出以外の素敵な機能
Mixed in keyにはキー検出以外にも、あと2つ(他のソフトにはない)独占的な機能があります。
曲をMixed in Keyに分析にかけると、
頭出しに適した美味しい部分を見つけ出し、それら美味しい複数の個所に、キューポイントを自動で設置してくれます。
そのキューポイントはSeratoやTraktorで即利用可能になります。
上記でも少し触れた、曲それぞれの「エナジーレベル」を検知する機能です。
曲それぞれが持つ雰囲気の強さを数値化することにより、DJが選曲する時の大きな手掛かりを作ってくれます。
これもあるとないとじゃ大違い。使える美味しい機能です。
Mixed in keyで分析済みの曲をtraktorで読み込むと、上記の「自動キューポイント設置」と「エナジーレベルの検出」の2つは、こうなります。
⬇︎
① は、選択したキューポイントのエナジーレベルを表しています。この場合は、「キューポイント4」のエナジーレベルは「4」。
②は、Mixed in keyが自動的に探し出し、付加してくれた、キューポイント。(もちろんこの機能は、Mixed in Keyの環境設定でオフにもできます。)
下の画像のようにキューのエナジーレベル表示の横の逆三角形をクリックすると、キューポイントごとのエナジーレベル一覧が出てきます。
一つの曲でもエナジーレベルが違うことがあるので、前にかかっている曲に合わせて、エナジーレベルが調子の良いポイントを素早く選んで、ミックスに生かすことが可能です。
キー検出だけではなく、この2つの機能を目当てに、密かにMixed in keyを導入しているDJも少なくいようです。
他のキー検出ソフトとの比較
キー検出機能だけに絞れば、SeratoにもTraktorにも標準装備されるようになりましたが、いかんせん精度が高くない。
個人的に、過去には、Traktorのキー検出機能を使っていました。
Traktorは大好きなソフトです。しかし、キー検出に関してはイマイチな出来。検出精度が信頼できるレベルに至っていなかった。
仕方ないので、その後、KeyFinderと言うフリーウェアを使用していたのですが、これもかなり誤検出があって自分としては満足でるものではありませんでした。
djtechtoolsで11月に行われた各DJソフトウェアの「キー検出機能の精度」の比較実験で、おもしろい結果が出ていたので、ぜひ参照してみてください。
↓
Key Detection Software Comparison: 2015 Edition:
http://djtechtools.com/2015/11/16/key-detection-software-comparison-2015-edition/
traktorが47%の正解率で惨敗。。
Seratoがえらくビミョーな結果で70% の正解率。
Mixed in Keyが86%の正解率で不動の1位。
正直言うと、Mixed in Keyの86%でも大満足とまでは言えませんが、まあ何とか信頼に値するレベルだと思います。
他の8割以下の検出精度では、実用とするにはいささか「?」でしょう。それらを使うなら、結局は検出結果を疑いながら使用しないといけないという事です。
djtechtoolsでは過去にも同一の比較実験をやっていますが、その時もMixed in keyのみ安定して好成績を収めていました。
↓
Key Detection Software Comparison: 2014 Edition
http://djtechtools.com/2014/01/14/key-detection-software-comparison-2014-edition/
Traktor:54%
Mixed In Key 6.0.2 : 95%
、、と良い事ずくめのソフトのように書いてしまいましたが、この「Mixed in Key」には複数の特筆すべき欠点もあります。
Mixed in Keyの欠点
他のソフトと比べて分析精度は半端なく高いですが、その分、解析に費やす時間が長い。
MacBook Airで約5000曲の分析に一晩掛かりました。多分ハイスペックなMacならもう少し早いのかもしれません。
これはたぶん、アプリ自体の海賊版を作らせないための措置だと思われます。
また、Mixed in key社の説明では、曲の分析に自社のサーバー・コンピューターを利用しているそうなので、そのためにネット接続が必要だと言っています。
そして、オンラインサービスを使う上で、これは重要な事ですが、Mixed in Keyのプライバシーポリシーには、顧客の音楽ファイルの種類とファイル名の送信は一切しないと明記されています。
mixed in key自体は、あくまでもDJプレイ前の仕込み(準備段階)で使うものであって、DJプレイ中に使うものではないので、アプリのネット接続の要求は、そこまでひどいことではないでしょう。
mixed in keyのようなキー検出支援ソフトは、DJプレイで使いたい曲の分析を済ませれば、基本的には、それでお役御免です。
曲の分析以外の機能は、ネット接続がなくても使用可能です。
2016年9月26日追記:
米大手DJ関連情報サイトDJTECHTOOLSのMixed in key関連の記事を再度読む機会がありました。
その記事は、Mixed in key(MIK)創立者のヤコブ氏へのインタビューがメインだったのですが、そこでインタビュアーが彼にMIKのインターネット接続の必要性について聞いたところ、
ヤコブ氏は、「毎年ダンスミュージックの傾向は変わっていくのでそれに対応するために、MIKは、曲の分析を当社のサーバーを介して行っている。それによって、他社のキー分析とは比較にならない正確性が担保できている。」みたいなことを言っていました。
個人的には、それは「海賊版を作らせたくないだけのくせに、取って付けたよう言い訳な感じで眉唾な話だなぁ」と思っていました。
しかし、最近MIKをv8にアップデートさせて、v7で分析済みの曲を再度v8で分析にかけてみました。すると、全体の約10〜20%くらいの曲の分析結果に変化がありました。
その変更されたキー情報はきちんと正確なキーに修正されているように見えます。
これはなかなか侮れないKAIZENをやっているのだなぁとちょっと感心しました。
また、MIKは、一つの曲に複数のキーがある場合でも、それを正確に分析して示してくるので、この点も、他のソフトでは未だなし得ていない独占的な機能であると言えるでしょう。
大量の曲を一度に分析にかけようとすると、高確率でアプリがクラッシュしました。
私のMacBook Airだと一度に分析をかけて不具合が出ない限界点は、1000曲くらいまでです。その為、大量に分析したい曲がある場合は、時間をおいてから、分けて作業する必要があります。
ゆっくり落ち着いて余裕を持ってやれば作業結果的には問題はありませんが、大量の曲を一度に分析したい場合などは若干ストレスを感じさせる緩慢さがあります。
動作が不安定になったMixed in keyをリフレッシュさせる方法
ユーザー名/Library/Containers/com.mixedinkey.application/Data/Library/Application Support
の「Mixedinkey」のフォルダを開いて、以下の2つのファイルを削除。
これでMixed in Keyのデータが全てリフレッシュされます。Mixed in key側の分析済みデータは全て削除されますが、分析データはタグとして(MP3などの)音楽ファイル側に書き込まれますので、特に問題はないかと思います。
設定のExport Cue PointsでMixed in Keyによる自動でCUEポイントを設定してくれる機能がありますが、この機能はまだまだ詰めが甘く感じます。
フレーズがずれていたりして、適正な場所にCUEが打たれていないことが多々あります。
まだまだ実験的な機能で、ベータ版以下の完成度ではないかと感じます。
私は、Export Cue Pointsの設定箇所はすべてオフにして、この機能を利用しないようにしています。
しかし、全く使えないわけでもなく、上記の打ち間違いもあることを念頭に置きつつ、目安として使うことは可能でしょう。
2016年9月15日 追記:
バージョンが7から8にアップデートされ、自動Cueポイントの精度が大分改善してきているように感じます。
上記で挙げた欠点は、全て仕込み時(分析時)に遭遇するものあって、いざDJプレイで使用する時は関係のないものばかりです。
一度きちんと分析ができてしまえば、あとはその音楽ファイルに書き込まれたデータをDJプレイ時に参照するだけなので、Mixed in key自体を開く必要はありません。
仕込みさえしっかりしておけば、上記の欠点がDJプレイ時に影響することは特にないということです。
個人的な気持ちとしては、Mixed in Key以上に分析精度が高く、またソフトウェアの安定性も頑丈で、なおかつネット接続を要求しないアプリがあれば、正直そちらを買った方がいいと思います。
しかし、残念ながら、Mixed in keyクラスの最高度の分析性能を持つソフトは、今のところ、Mixed in key以外存在しません。
Mix in Keyは、PCDJな人にも、rekordboxなどと連携させてCDJを使用するDJにも非常に有効なツールなのは間違いないでしょう。
使い方は、マニュアルを読む必要もないほどにシンプルです。それなのに多機能。
また時間の多大な節約にもなります。(その辺がプロに選ばれている理由。)ミスを誘発しやすい長時間のDJプレイでも、相当ありがたいツールです。
しかし、名のあるプロをはじめ、相当の数のDJたちが愛用しているとは言え、こんなに楽をしちゃっていいんでしょうかね。。
便利なソフトではありますが、オート・シンクやキー検出などの機能に頼りすぎてしまうと、DJ自体の個性が出しにくくなることもあるので、極端な依存をせずにうまく付き合うようにしましょう。