MacとTraktorの組み合わせで発生する可能性のあるオーディオ関連の不具合。
この不具合報告は、2年以上続いていて、Trator公式のフォーラムを覗くと、かなりの数の関連スレッドが作成されていて現在進行形で議論が重ねられています。
(※ もちろん、すべてのMac+Traktorユーザーにこの不具合が現れているわけでもないようなので、不具合を感じていない人までが神経質になる必要はないかもしれまん。)
主な不具合の症状
主な不具合の症状は、突然の音飛びや音の歪み、音の停止。ノイズなどの音質の劣化。DVSでの遅延、ソフトのフリーズなど多岐に渡ります。主にオーディオ関連の比較的重大な不具合が相当数報告されています。
中でも顕著なのが、MacのOSがEl Capitanの場合で、プレイ(再生)時間が長くなってくると、上記の不具合に遭遇する確率が上がっていくということのようです。
それより古いOSのYosemiteやMavericksでも、El Capitan程ではありませんがかなりの数の不具合情報がTraktorのフォーラムやネット上で散見されます。
オーディオドロップアウトの典型的な症状(動画)by blaki
この不具合の原因は、MacのCore Audioが原因であるとNIが公式に発表しています。
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この辺が詳しいです:
Native Instruments サポートページ内の記述
OS X 10.9 – 10.11におけるオーディオパフォーマンスの問題(音飛び、歪み、タイムコードの遅延)
※上記のページに暫定的な解決方法が記載されています。
Native InstrumentsコミュニティーのTraktorフォーラム(英文)内で、「Mac+Traktorの不具合」について議論が行われているスレッドの一部:
Sound drop outs under Yosemite
El Capitan 10.11.1 & Traktor 2.10 Audio Dropouts – Help please!
Audio playback issues distortion, crackles & noise.
Problem with traktor – Audio Drop Out, Distorted Sound – on Mac
Status: Latest OSX + Traktor = AUDIO Problems
※上記フォーラムの重要記述の抜粋
There are 2 current issues in this thread: by frankle
オーディオドロップアウトの典型的な症状(動画)by blaki
Traktor RC版(テスト版)フォーラムの重要記述のTraktorスレッドへの転載 By djmichaelk80
他の掲示板:
Mavericks audio dropouts “clipIfNecessary”
Audio drop outs + error log in both Mavericks and Yosemite – any ideas?
Macのコンソールアプリに 「IOAudioStream」のエラーメッセージという形で不具合の状況が表示させる場合もあるようです。
「ioaudiostream site:www.native-instruments.com」
Traktor製造業者のNI(Native Instruments)社の言葉を借りれば、その不具合に遭遇する頻度は、
Mavericks(OS X 10.9)(稀)
Yosemite (OS X 10.10)(不定期再現)
El Capitan (OS X 10.11)(他のバージョンと比較して最も発生頻度が高い)
ということのようです。
実は、上記の不具合の件は、Mountain Lionでは再現されないようです。
噂では、MavericksからMacのCoreAoudio関連の仕様が変わったのが影響しているのではと言われています。
自宅でMIXTAPEを作成するくらいならそれほどリスクはないかもしれませんが、仕事でTraktorを使用する人にとっては深刻な問題となりえます。
(※ もちろん、すべてのMac+Traktorユーザーにこの不具合が現れているわけでもないようなので、不具合を感じていない人までが神経質になる必要はないかもしれまん。)
現状の根本的な解決方法
上記の不具合に対する、NIサイト・Traktorフォーラムでの有力なの解決方法は、以下の2点と言われています。
と、その前に、NIが発表している暫定的な先制措置を試してみるのも良いかのしれません。
しかし、この先制措置は効果がなかったと言及している人たちも結構いるようです。
それはこちら、、
OS X 10.9 – 10.11におけるオーディオパフォーマンスの問題(音飛び、歪み、タイムコードの遅延)
※上記のページ内に暫定的な解決方法が記載されています。
現在、完全に上記のリスクを事前に避けるためにユーザーができることは、この2つだけのようです。
(もちろん、導入に関しては、ご自分の責任で行ってきださい。当方は一切関知致しません。)
1. OSはWindowsを使う
MacBookユーザーの場合は、BootCampでWindowsを導入することが可能です。Windows7や10などを購入して、BootCampの手順にしたがってインストールすれば良いので、まあ、手軽ではないかと思います。
(※ ただし私自身は後述する解決方法2番のMountain Lionの導入を選択したので、この方法は実践していません。)
こんなことを言っている人もいます。
NIコミュニティー・TraktorフォーラムのモデレーターのKarlos Santos氏
Macbook Pro – Do I install Mac version or Windows version of Traktor Pro?
引用:
I think you are looking at this subject thru the eyes of a happy Windows user that is hesitant about OS X.
The “learning curve” is much less troublesome than using Win with Bootcamp. Bootcamp sucks in my opinion and will not give you a 100% Windows experience – it’s one big workaround that I personally do not like.意訳:Macを使ってるならBootCampでWindowsを使うより、OSXを使った方が面倒が少なくて楽だと思うけどね。
BootCampはしんどいよね。あれって完璧なWindowsじゃないよね。それに、一時しのぎの手段で、私は好きじゃないな。
又はこんなことを言っている人もいます。
こちらは、あるユーザーからのフォーラムへの投稿で、古い白MacBookでCPUのスペックの問題でOSをスノレパに上げられないマシーンでTraktorを使うためにはどうしたら良いかという相談に、DJTECHTOOLSフォーラムのTECH GURUのmdcdesign氏が答えたもの。
Older Macbook trying to run traktor pro 2.6.2
引用:
To be honest, I think you guys’ best bet would be to install Windows via Bootcamp and just use the Windows version of Traktor.
意訳:はっきり言えば、BootCampでWindowsがベストな判断だろうね。そのWindowsにWindows版のTraktorを使えばいいよ。
こんな感じなので、チャレンジする方は誰も保証はしてくれません。とりあえず、Good luck!
とはいえ、TraktorはMixed in keyなどと違い、MacからWinに移行した際、追加料金が取るような悪どいことはしません。なので、ユーザーはMac、Winと自由に行き来できます。Windowsのライセンスを持っているなら試すのはタダってことです。
BootCampを利用する際の、私が思いついた諸々の注意事項をあげておきます。
その1. itunesファイルに関してはOSX側のパーティションに置くとWindows側では読めません。
逆にWindows側のパーティションに置くと、Macで読めますが書き込みができません。
したがって、どちらでも読み書きできるフォーマットであるEXFATでitunesフォルダ専用のパーティションを作成する必要があります。
itunesライブラリ自体はMacとWinどちらでもアクセス可能なので、共有することができます。
itunesのWinとMacの共有はこちらの記事が参考になると思います。
または、『BootCamp itunes 共有』などでググると、色々情報が出てきます。
Windows環境からMacのパーティションへの読み書きができるようにする方法もあるようです。(またはその逆も。)
サードパーティのソフトを購入して使う方や、コマンドを使って作業設定する方法などがあるようですが、どれもイレギュラーな手段なのでMac上級者向けって感じですね。
システムの安定性を考えると、上記のiutnes用に専用のパーティションを用意する方が楽だと思います。ただし、ストレージの容量はそれ相応に必要になります。
その2. BootCampでWindowsを動かすと、OSX稼働時よりMacBookが熱を持ちやすくなります。
心配な方は、MacsFancontrolなどのサードパーティのアプリを入れて対処しましょう。
Macs Fan Control – control fans of any Mac & Boot Camp!
3. WindowsをTraktor専用に使うなら、諸々のシステム最適化は行った方が良いでしょう。
やり方はでググってください。色々あると思うので、好みの方法を行うと良いでしょう。
2. MacのOSをMountain Lionに戻し、Traktor2.6.8をインストールする
現状でのMountain Lionで使用可能な安定版と言われているバージョンはTraktor 2.6.8です。
※ この方法は、購入時プリインストールされていたOSがMountain Lionかそれより前のOSに限り導入可能です。(新しいMacの場合は上記1のWindowsを導入する方法の方が現実的でしょう。)
※ また、このTraktor2.6.8は最近のコントローラーであるS8、D2、S5に対応していないようなのでそれらのコントローラーを使っている方はこの方法は不可能です。
私は、すでにこちらを選択して導入済みです。
しかし、Mountain Lionはすでに、Appleのサポートが、セキュリティーも含めて終了したと言われています。
ネットに繋がないTraktor専用機のMacを用意してそれにMountain Lionを入れるのなら良いのですが、普段使いのMacにMountain Lionを使うのは不安があります。
実は、Mountain Lionを導入する方法がもう一つあります。
それは、Macのストレージのパーティションを2つに分割して、片方に普段使い用のYosemite(El Capitan)を入れて、もう片方のパーティションにMoutain Lionを入れる方法です。
いわゆる、デュアルブートってヤツです。
私もMountain Lionでのデュアルブート作成は、初めての作業だったので、試行錯誤がありましたが、勝手がわかれば簡単です。
なので、Mountain Lionが導入可能なMacの場合は、これが、おすすめの方法です。
流れ的にはこんな感じです。
1. 一応、現在のYosemite(El Capitan)環境をTimeMachineでバックアップ
↓
2. Moutain Lion用のリカバリUSBメモリを作成。
↓
3. ディスクユーティリティーでMacのストレージを2分割する。
↓
4. 作った2つ目のパーティションにMountain Lionをインストールする。
↓
5. Moutain Lion側のパーティションにTraktor 2.6.8をインストールする。
2. のMountain Lion用のリカバリUSBメモリの作成に関しては、以下の記事が大変参考になりました。
『Mountain Lion』がプリインストールされたMacから復旧用USBを作ろう!
by tidestarさん
Mountain Lionのハードディスクの占有容量は、現行のEl CapitanやYosemiteと比べ約半分くらいととても小さいので、そこまで元のストレージを圧迫しないと思います。
私はMountain Lionのパーティションは、30GBだけにしています。
音楽ファイルは、Yosemite側のパーティションに入れているのでこれでも大きすぎるくらいです。しかし、システムを入れるパーティションサイズは、占有容量の倍くらいあった方がSSDの健康やシステムの安定性のために良いと聞くのでこれくらいのパーティションサイズにしています。
3. ディスクユーティリティーでMacのストレージを2分割する方法は以下の記事を参考にしてください。
4. パーティションにMountain Lionをインストールする方法は、以下のサイトが参考になります。
Mountain Lionを外付けHDDにインストールしたのでレポート。(Lionとデュアルブート)
by iyutoさん
5.のTraktor 2.6.8のダウンロード先はこちら。
TRAKTOR 2 Legacy Installers for Older Operating Systems
By Native Instruments オフィシャルサイト
それにしてもMountain Lionは軽い!
そしてUIがフラットデザインではないので、非Retina液晶のMacBook Airとの相性良く、とても視認性が高い!
ただしここで一つ注意が必要なのが、itunesで楽曲の管理をしている場合です。
普段使用するYosemite(El Capitan)側のitunesのバージョンと、Mountain Lion側のitunesのバージョンが同一でないと、itunesのライブラリーがバージョンの新しい方でしか読めなくなります。
したがって、いつも使っているOS側のitunesバージョンをアップデートした時は、Mountain Lion側のitunesも同じくアップデートする必要があります。
私の場合は、どちらのOSXでも、itunesのバージョンは常に10.7で固定しています。
実はもう一つ他にもMountain Lionを導入する方法があります。
仮想化です。
YosemiteやEl Capitanで動いているMacの中にParallelsやvmwareなどの仮想化ソフトを導入して、その中でMountain Lionを走らせる方法です。
実は、この方法だと新しいMacでもMountain Lionの導入が可能らしいです。
ただし、仮想化を使うには相当のマシンスペックが要求されます。
なので、メモリは16GBくらいとCPUはCorei7クラスのものを使用した方が安定性という面では良いのではと思います。
どちらにしてもリアルタイム演奏で使用するDJソフトは安定性が肝なので、私的にはこの方法はイレギュラーだと感じて候補からは除外しました。
興味のある方はご自分で調べてみてください。
また、これからTraktorを使うためにMacBookを購入予定の方は、上記の不具合に遭遇する可能性があることを頭の片隅に入れておいた方が良いと思います。
次期OSの「macOS Sierra」では、この不具合が全面的に解消されれば良いのですが、今の時点ではなんとも言えません。
従って、Mac+Traktor+MacのOS(Mountain Lion)で完璧なセットアップを期したいなら、Mountain Lionが導入可能な中古の状態の良いMacBook AirやProを購入する選択も必要になってくるかもしれません。
まあそこまでするなら、(不具合が解消するまでのつなぎとして今のところは)Windowsをブートキャンプで入れるのが順当な方法かとは思います。
追記
NIコミュニティー のTraktorフォーラムのヘッダートップにTraktorチームからのメッセージが表示されるようになりました。
そのメッセージの中のパブリックベータ版への案内のリンクに飛ぶと以下のメッセージが出てきます。
macOS SierraとNIハードウェアとのテストは上手くいっているということのようです。(全面的期待して良いのかはまだわかりませんが。。)
やっと、次期MacOS Sierraで多くのユーザーを長いこと悩ましてきたこのトラブルの回避への光明が朧げながらも見えてきたようです。
引用:
TRAKTOR Pro on Sierra – Public Beta
Dear TRAKTOR Users,
We’re happy to report that after working closely with Apple and intensive testing, macOS Sierra delivers very stable audio performance on all our current-generation hardware devices.(※)
We now want to extend our testing efforts for collecting as much relevant information as possible about Sierra until the date of the official release. For this purpose we are kicking off this public beta test cycle focussing solely on the compatibility of the current TRAKTOR software and hardware with macOS Sierra.
WARNING: Please be aware, that we will stop support on macOS Sierra for our first-generation audio interfaces:
- TRAKTOR KONTROL S4
- TRAKTOR AUDIO 8, 4 and 2 DJ
If you depend on using these devices, you should consider not participating in this beta test until there is more information available or you should at least make sure, that you can roll back easily after the test.
The TRAKTOR Team
(引用元:https://native-instruments.centercode.com/callout/?callid=2F2015990CF14630B8B77087EF335CB0)
※ 引用文の下線太字部分は筆者による強調。
新しい記事を書きました
おまけの話
ちなみに、旧バージョンのTraktor2.6.8+ Moutain Lion組み合わせは、CoreAudio関連のトラブルの面では安定しているが、
以前まで使用していた最新版のTrktor2.10.3とYosemiteの組み合わせと比べると、LOADメーターの値が増加しているのがわかる。
使用上、今のところ特に不都合は感じていないが、4デッキでRemix deck使用やMacroFXなんかを多用するとLOADメーターがクリッピングを起こす可能性もありそう。
私の場合は、その手の機能は基本的にはあまり使用しないので、問題ないのだが。。
やはり、新しいTraktorのバージョンの方が、システムのオーディオ処理の最適化がよりスマートになっているんだなと感じる。
このあたり、どちらを取るか個人の問題。
自分は複雑な機能を捨てる代わりに安定性をとった感じ。
Native Instrumentsが現在行っている「MacOS SierraとTraktorとのテストと最適化」がうまくいけば、この我慢も短期間で済むだろうと淡い期待を持ってはいます。。