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iZotope RXより安い「Acon Digital Acoustica 7」ノイズ除去&マスタリング、オーディオ編集

「Acoustica 7 プレミアム版」のワークスペース。(エディタにオーディオクリップがロードされた状態。)

ノルウェイ・オスロに拠点を置くAcon Digital社は、Windows/Mac用のオーディオエディティングソフトウェア「Acoustica」 のバージョン7.3を発表しました。(Acon Digital社は主にオーディオ編集を得意とするデベロッパーです。)

Acousticaとは?

このAcousticaというソフトは、オーディオ編集に特化したソフトなのですが、オーディオ修復など様々な機能が追加されたことにより、iZotopeのRXに対抗しうる強固なツールなりました。

これ、ものすごく多機能なソフトです。

オーディオ修復以外にも、マスタリング用ツールも一式揃っているので、iZtotope Ozoneあたりもライバルになるソフトです。

また、V7からは、Macへの対応も開始されています。

まずは、下の2つの動画(4分と10分弱の)をご覧ください。この動画で「Acoustica V7」がどのようなソフトなのか理解が進むと思います。

Acoustica 7に含まれるマスタリングプラグイン4製品バンドルMastering Suiteの紹介動画(4:27):

Acoustica 7自体の紹介動画

新着紹介動画(8:20・自動翻訳の日本語字幕可能):

紹介動画(9:23・自動翻訳の日本語字幕可能):

Acon Digital Acoustica 2つのバージョン

Acoustica バージョン7.2のマルチトラック・オーディオ編集機能

Acoustica v7には「Standard」と「Premium」の2つのバージョンがあります。

Premium版には、サードパーティのホストアプリケーション(お好みのDAW)で使用するためのVST、VST3、AAX、Audio Unitの豊富なプラグイン・コレクションが付属しています。

Premium版だけに装備されている限定機能

  • スペクトル編集
  • フル機能のオーディオ復元プラグインバンドル(Restoration Suite 2 :DeClick 2, DeClip 2, DeHum 2, DeNoise 2)
  • フル機能のマスタリング系5製品バンドル(Mastering Suite:Dynamics, Multiband Dynamics, Limit, Equalize 2, Dither)
  •  Verberate 2(自然な響きを持つリバーブとして定評のあるプラグイン)
  • マルチバンド・ダイナミクス
  • 最大8チャンネル(5.1または7.1サラウンドなど)でのマルチチャンネル録音、編集、保存

プレミアム版には、

別途Acon Digital社から販売されてるされている優秀なプラグインが標準装備されています。

上記の三製品に代表されるダイナミック処理、マスタリング、エフェクト処理、オーディオ復元などの新しいプラグインが無償で付属します。

一方、Standard版では、以下の製品が入っています(アプリケーション内でのみ使用可能)。

  • Restoration Suite 2 – DeNoise Light (アダプティブモードなし、パラメータ数が数が少ない)
  • アコンデジタルVerberate 2 – 機能限定版
  • アコンデジタルイコライズ – 最小位相モードのみの機能制限版

また、Standard版では、では、「スペクトラルアナライザーを使った新しいスペクトル編集モード」が省かれています。

スペクトル編集モードとはは、Equalize、Verberate、Restoration Suiteなどのプラグインから処理ツールにアクセスしながら、より正確な復元作業を可能にしてくれる機能です。

この「スペクトル編集モード」が、Acoustica7の大きな売りの一つなので、オーディオ処理に完璧を期したい場合は、Premium一択になると思います。

(加えて、Premiumはサラウンド対応。Standardはステレオまでの対応になります。)

スペクトル編集モード(プレミアム版のみの機能)

しかし、気軽にオーディオ編集と修復を行うなら、Standardでもかなりのことが出来ます。

以下の表をご覧になるとわかりますが、「Standard」と「Premium」の違いは、「スペクトル編集モード」の有無以外はそれほど大きな違いはありません。

しかし、「スペクトル編集モード」こそがAcon Digital Acousticaの最も重要な機能の一つになっています。

もし「スペクトル編集モード」に必要性を感じないなら、「Standard」の選択も考慮に入れると良いと思います。

「Standard」と「Premium」の 違い

一般的な機能標準版プレミアムエディション
オーディオの録音と再生でサポートされているドライバーモデル(Windows)ASIO、Windowsオーディオ(排他的および非排他的)、DirectSoundASIO、Windowsオーディオ(排他的および非排他的)、DirectSound
オーディオの録音と再生でサポートされているドライバーモデル(Mac)CoreAudioCoreAudio
オーディオチャンネルの最大数2(ステレオ)8(最大7.1チャンネルサラウンド)
最大サンプルレート384 kHz384 kHz
サポートされているビット解像度最大32ビットPCMまたは浮動小数点最大32ビットPCMまたは浮動小数点
タイマーと入力レベルでトリガーされた録音はいはい
元に戻すレベルとやり直しレベルの数無制限無制限
超高速の非破壊編集エンジンはいはい
標準のカット、コピー、貼り付け、ミックス編集はいはい
オプションのスプライスポイントでの自動クリック解除はいはい
ドラッグアンドドロップ編集はいはい
ラベルとリージョンマーカーのサポートはいはい
ワークスペースファイルのサポートはいはい
LPまたはテープからCDへの転送を簡素化するクリーニングウィザードはいはい
時間形式時間:分:秒:MS、SMPTE(23.98、24、25、29.97ドロップフレーム、29.97ノンドロップフレーム、30 fps)、サンプルインデックス、バー:ビート:ティック時間:分:秒:MS、SMPTE(23.98、24、25、29.97ドロップフレーム、29.97ノンドロップフレーム、30 fps)、サンプルインデックス、バー:ビート:ティック
リージョンは個別のファイルとして保存できますはいはい
タブ付きMDIユーザーインターフェイスはいはい
スペクトル編集標準版プレミアムエディション
クリップエディタで波形ビューとスペクトログラムビューを切り替えますNoはい
時間分解能の向上該当なし最大8倍
時間-周波数選択ツール該当なしエリア(時間範囲、周波数範囲、またはそれらの組み合わせ)、ブラシ、フリーハンド、魔法の杖
レタッチツール(時間-周波数選択のノイズを減衰させる)Noはい
倍音の選択該当なしはい、alt +マウスホイールまたは上向き/下向き矢印は、高調波の数を設定します
周波数スケール該当なしメル尺度、対数または線形
マルチトラック編集標準版プレミアムエディション
マルチトラックエディターはいはい
レンダリングされたオーディオチャンネルの最大数2(ステレオ)8(7.1および5.1サラウンドを含む)
トラックの最大数無制限無制限
処理チェーンインサートの追跡、マスターインサート、エフェクトの送信インサートの追跡、マスターインサート、エフェクトの送信
ループまたはタイムストレッチクリップはいはい
クリップ間のクロスフェードはいはい
クリップがフェードするはいはい
自動化曲線ボリューム、左から右へのパン、後ろから前へのパン、センドレベルボリューム、左から右へのパン、後ろから前へのパン、センドレベル
リアルタイムアナライザー標準版プレミアムエディション
真またはサンプルのピーク、ピークホールド、およびRMSインジケーターを備えたレベルメーターはいはい
レベルメーターモードK-20、K-14、K12およびデジタルフルスケールK-20、K-14、K12およびデジタルフルスケール
カスタマイズ可能なレベルメーターの弾道設定はいはい
ラウドネスメーターはい(EBU R-128準拠)はい(EBU R-128準拠)
スペクトラムアナライザはいはい
位相相関計はいはい
時間表示はいはい

分析ツール標準版プレミアムエディション
スペクトル分析はいはい
スペクトログラム分析はいはい
ウェーブレット(モーレットウェーブレット)分析はいはい
スペクトルヒストリグラムはいはい
統計はいはい
自動トラック分割はいはい
シームレスに統合されたプラグイン標準版プレミアムエディション
修復スイート2はい。ただし、DeNoise Lightを使用します(静的ノイズプロファイルのみで、パラメーターは少なくなります)はい
マスタリングスイートダイナミクス、リミット、ディザ、および機能限定バージョンのEqualize 2全て
Verberate 2機能限定版はい
抜粋:対話Noはい

 ​

オーディオ処理標準版プレミアムエディション
処理チェーンはいはい
プラグインのサポートVST、VST3、AU(Macのみ)VST、VST3、AU(Macのみ)
リアルタイムプレビューオーディオプロセッサはいはい
プリセットマネージャーはい(内部ツールの場合)はい(内部ツールの場合)
体積曲線はいはい
5つの異なるカーブでフェードインとフェードアウトはいはい
高品質のサンプルフォーマット変換はいはい
ディザリングとノイズシェーピングはいはい
ステレオ画像調整用チャンネルミキサーはいはい
バッチ処理(ファイルと完全なフォルダー構造)はいはい
サンプラーループを追加するはいはい
ループフェーダー(クロスフェードループ)はいはい
テスト信号発生器はいはい
ダイナミクス(コンプレッサー、拡張、ゲート)はいはい
マルチバンドダイナミクス(マルチバンドコンプレッサー、拡張およびゲート)Noはい
制限はいはい
リミックスはいはい
オーディオの復元標準版プレミアムエディション
抜粋:対話Noはい
DeWind:DialogueNoはい
DeRustle:対話Noはい
DeBuzz:対話Noはい
DeClickはい(Restoration Suite 2から)はい(Restoration Suite 2から)
デクリップはい(Restoration Suite 2から)はい(Restoration Suite 2から)
DeNoise静的ノイズプロファイルのみでパラメータが少ないライトバージョンはい(Restoration Suite 2から)
DeHumはい(Restoration Suite 2から)はい(Restoration Suite 2から)
活力を与えるはいはい
DCオフセットを自動的に削除しますはいはい
効果標準版プレミアムエディション
リバーブはいVerberate 2
コンボリューションリバーブはいはい
エコー(マルチタップ遅延幅フィードバックフィルタリングとオプションのステレオバウンス)はいはい
モジュレート(フランジャーとフェイザー)はいはい
コーラスはい、Acon DigitalMultiplyに基づいていますはい、Acon DigitalMultiplに基づいています
移調(ピッチチェンジ)はいはい
タイムストレッチはいはい
最大4つの声のハーモナイザーはいはい
ファイル形式標準版プレミアムエディション
サポートされているオーディオ形式WAV、WAV64、AIFF、MP4(AAC – Windows 7以降が必要)、MP3、OGG、FLAC、WMAWAV、WAV64、AIFF、MP4(AAC – Windows 7以降が必要)、MP3、OGG、FLAC、WMA
ACID情報を編集するiウェーブファイルはいはい
ワークスペースの統合ファイルブラウザペインはいはい

CDプロジェクト標準版プレミアムエディション
統合されたオーディオ書き込みはいはい
ギャップレスレコーディングのためのディスクアットワンスバーニング(DAO)はいはい
CDからオーディオトラックをインポートするはいはい
バッファアンダーアン保護スキームをサポートしますはいはい
CDプロジェクトの保存と読み込みはいはい
CD-RWを消去するはいはい

(出典:https://acondigital.com/products/acoustica-audio-editor/

Acoustica 7.1&7.2で新たに搭載された新機能

バージョン7.1の機能

  • 他のホストアプリケーションで使用するためのプラグインの広範なコレクション(Premium Editionのみ)。
  • Pro Toolsの転送ツールを使用すると、オーディオをAcousticaに転送し、処理後に元に戻すことができます(Premium Editionのみ)。
  • 新しい置換とリダクション方法(プレミアム版のみ)を備えた改良されたレタッチツール。
  • バッチプロセッサの処理がマルチスレッド化され、マルチコアCPUのパフォーマンスが向上しました。
  • マルチモニター設定用の取り外し可能な窓枠を備えたドッキングシステムの改良。
  • オプションのプリロールによる録音ダイアログの改善。
  • RF64サポート。
  • 自動更新通知。

バージョン7.2の新機能

(2020年3月14日 追記)

  • macOS Catalinaのサポート
  • 付属のプラグインは最新バージョンに更新されます(Premium Editionのみ)
  • ステムの分離とリアルタイムのリミックスのための新しいリミックスツール
  • マルチトラックエディターの新しい[ファイルからステムをインポート]コマンドは、ステムを自動的にトラックに分割します
  • 新しいExtract Dialogueツールは、ダイアログの録音からバックグラウンドノイズを削除します(Premium Editionのみ)
  • 新しい時間解像度拡張テクノロジーを使用したスペクトルエディターの時間解像度の改善(プレミアムエディションのみ)
  • 開いているファイルのリスト、処理チェーン、ウィンドウレイアウトを保存するワークスペースファイルのサポート
  • 切り抜きや無音の除去などの一般的なタスクのための自動編集ツール
  • マルチトラックセッションでクリップをダブルクリックして、クリップエディターで編集します
  • Processing Chainの新しいソロプロセッサーボタン
  • ボタンをクリックするだけで、選択を処理チェーンから新しいファイルにレンダリングできるようになりました

バージョン7.3の新機能

(2021年11月23日 追記)

最も重要な新機能の概要

  • Apple M1などのApple Siliconプロセッサにネイティブ対応


  • Acoustica Premium Editionでは、ディープラーニングを活用したダイアログのポストプロダクションのための4つの新しいプラグインを追加しました。



    • Extract:Dialogue (ダイアログ録音のバックグラウンドノイズを自動的に低減させることができるプラグイン)


    • DeWind:Dialogue(会話中の風切り音を自動的に低減させることができるプラグイン)


    • DeRustle:Dialogue(ラべリアマイクで録音時の衣擦れやマイクのバンプノイズを自動で低減してくれるプラグイン)


    • DeBuzz:Dialogue(ネオンやAC電源のノイズ、RF通信のノイズなど、会話録音に含まれるノイズを自動的に低減してくれるプラグイン)





  • スペクトルエディターの選択ツールを改善しました。ジオメトリの移動とサイズ変更が可能になりました。


  • リミックスツールが改良され、ステムごとに感度を調整できるようになり、別途ダウンロードする必要がなくなりました。


  • Time StretchとTransposeツールの音質を改善しました。


  • マルチトラックエディターで、クリップのフェード、リージョンの選択とループ、スナップなどの機能を改善


  • メディアファイルブラウザからファイルをドラッグして、クリップエディタ、マルチトラックセッション、CDプロジェクトにドロップできるようになりました。


  • 32ビット対応


  • 32ビットWindows版のサポートは、Acoustica 7.2のリリースで終了しました。

Acoustica 7の価格

Acoustica 7.1の価格は、

「Standard」:通常価格:59ドル → セール価格:44ドル(2021年12月)

「Premium」:通常価格:199ドル → セール価格:149ドル(2021年12月)

と、StandardとPremiumでは、だいぶ価格が違います。

上位版のPremium版は、Equalize 2、Verberate、Restoration Suite 2(DeClick、DeClip、DeHum、DeNoise)

くわえて、

  • Phono Filter
  • Vitalize
  • Convolve
  • Dither
  • Dynamics
  • Multiband Dynamics
  • Limit
  • Transfer (Pro ToolsからAcousticaへのオーディオトランスファー用プラグイン)

が含まれます。

一方、機能制限付きの「Standard版」は、Premiumエディションの1/3以下の価格で購入できます。

Standard版は、iZotope RXの下位版に当たる「RX Elements」の有力な対抗となり得るでしょう。(と言いますか、iZotope RX Elements比較するとAcoustica Standard版の方が、相当に多機能です。)

また上位版の「Premium」もRXの正規の価格と比べると、かなり魅力的です。

RXには「アシスタント機能によるオーディオ修復自動化」と「音声のパートごとの分離機能(ボーカルと音楽の分離など)」という超絶に便利な機能が追加されているので、これらの機能が必須ならRX一択です。

Acon Digital Acoustica7シリーズとiZotope RX シリーズのと大きな違いは 、

RXはサジェスト機能など自動化に重きを置いていますが、Acoustic7は自動化には重きを置かず(ミキシング&マスタリングまで含めた)より広範囲なオーディオ編集機能を網羅した「汎用性」を重視したソフトであると言えるでしょう。

自動化やオーディオ分離機能に魅力を感じないなら、Acon Digital Acoustica7の方が(マスタリング機能など)出来ることが幅広いので、「汎用性」と「お手ごろ感」で考えるとリーズナブルな選択肢になり得るでしょう。