テクノやハウスDJの標準的なセットアップとはどんなものか?(DVSとPCDJ)
「アナログレコードが奏でる音は温かみがあって素晴らしい」という思いがあったとしても、実際にはコストや音源の調達、管理などの面で容易さには欠ける。
そのため、もっと利便性がある方法を求めるDJが多いのも事実。
その場合、CDJを使うかPCDJソフトウェアで音源を再生し、外部のリアルミキサーを用いてミキシング(曲同士を混ぜる作業)などのDJプレイをすることになります。
今回は、テクノやハウス、EDM、ヒップホップDJのための、主にPCを用いた標準的なセットアップとはどんなものか見ていくことにしましょう。
「現代的DJの機材選び」目次
2 「DVSとPCDJ」リアルミキサーとPCを使ったDJプレイ
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今回はここ
3 本格的なDJプレイを望む人にお勧めしたい 「Kontrol Z2 DJ Mixer」
4 MIDIコントローラーとインターナルミキサーを使ったDJプレイ
PCを使った「DVS」(デジタル ヴァイナル システム)という方法
下の写真が、PCを使ったDJプレイの極一般的なスタイル。
ニュージーランドのメジャーなDJソフトウェアScratch Live(現在はSerato DJに進化しました)を使って、Mac内の音源をリアルミキサーとターンテーブルでコントロールしている。
この構成は、ご存知の方も多いでしょう。DVS(デジタル ヴァイナル システム)という方法です。
(写真のミキサーはどちらかというとHip Hop向けですが、DVSの基本的な構成はハウスもヒップホップも大きくは変わらない。)
DVS対応のPCDJソフトは、コントロールバイナルと呼ばれる専用のレコードの動きと、PCDJソフトの中でかかっている曲(PC内のWAVやMP3の音楽ファイルを)を連動させ、まるで本物のレコードをかけているかような感覚で操作することを可能にしています。
上記図を参照。
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これが単純化されたDVSの仕組みです。
これ以外にもマルチコアケーブルを用いた生レコードとPCDJソフトの働きを連動させる仕組みなどがありますが、とりあえずは上記の部分だけでも知っていれば、DVSがどういうものかは理解できたと言って良いでしょう。
(※1)オーディオインターフェイスとは、
簡単に説明すると2つの役割があり、
一つはPCの音の出入り口を増やして、フロアーでかかっている曲とは別に、ヘッドホンで次にかける曲などをモニターすることを可能にしたり、複数の曲を別々に外部に出力できるようにする役割。(複数の入出力を可能にする働き。)
もう一つは、PCのデジタル信号をミキサーやスピーカー、ヘッドホンなどにアナログ音声として出力できるように変換する役割。
それとは逆に、DVSでは、レコード針が拾ったアナログ信号をPCが受け取れるようにデジタル信号に変換する役割も担う。
主なオーディオ・インターフェイス
Traktor scratch(DVS)用オーディオインターフェイスとしては最高機種の「A10」
タンテやCDJを4デッキ(4曲同時にプレイすること)まで使用可能。
A10は価格が約6万円。 そこそこ値段はするが、高音質。また、ソフトウェアのTraktor scratch pro2が付いてくる。お得度が高いオーディオインターフェイスです。
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*すでにNative Instruments社はこのA10の発売を終了しています。店頭在庫が終了すれば、A10の新品を購入するのは困難になると思われます。
また、新型A10発売の情報はまったく聞かれません。完成度の高いインターフェイスだっただけに残念です。
Traktor Audio A6
こちらは2デッキ対応。価格は3万8千円ほど。
もちろんターンテーブル、CDJでコントロールできるTRAKTOR SCRATCH PRO 2が付属します。
スタンダードな2デッキプレイ(2つ曲を交互につないでいくスタイル)にぴったりのオーディオインターフェイス。
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ターンテーブルなどをつないで操作するDVS用にはならないが、後に紹介する「リアルミキサーとPC」のDJや、「midiコントローラーとPC」のDJプレイに使用できる。
したがって、こちらもリアルミキサーに繋いで使うことが事が可能です。
タバコのボックスとほとんど変わらないサイズ。現在、1万円少々 で購入可能。
DVSに必須な入力機能を省いたシンプルで高性能なインターフェイス。
出力系統はステレオ2アウト(アナログ4アウト)なので2デッキ対応。A6同様、2デッキ以上には対応しません。その分とても安く買える。
オーディオインターフェイスが付かないコントローラーやリアルミキサーとコンビで使うのに便利。
ターンテーブルやCDJを繋いでDVSの使用はできないのですが、
普通のミキサー+PC+このAudio2 MK2のみでDJプレイのセットアップを完結可能です。
そのセットアップに、(Traktorの諸々の操作用に)Kontrol X1を導入すればある意味完璧です。
CDJやターンテーブルを使用したDVS、スクラッチなどの円盤こすり系プレイはできませんが、それ以外のプレイはほぼ可能です。
すでにリアルミキサーを所有していてPCDJを安価にやりたい人は、大型のコントローラーを買わずとも、PCとこのオーディオインターフェイスのみがあれば、とりあえずはDJがスタートできます。(できればそれプラス、PCDJソフト操作用の補助コントローラー(Kontrol X1など)があればより便利になります。)
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Denon DJから最近発売されSerato用(DVS対応)オーディオインターフェイス「DS1」。
価格は従来のRane社製のSLシリーズより安く五万円ほど。もちろんソフトウェアのSerato DJと「Serato DVS Expansion Pack」が同封されています。
オーディオインターフェイス付きのSerato DJ対応のリアルミキサーは非常に高価なものばかりなので、SeratoでDVSを使ってプレイをするなら、このDS-1と好みのミキサーのセットアップが一番安い方法でしょう。
DS-1を使えば、組み合わせるミキサーはアナログミキサーでもデジタルミキサーでもお好きな機材をチョイスできます。
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ちなみに最近では、DJミキサー自体にDVS用のオーディオインターフェイスが内蔵された機種も発売されている。
それらのミキサーを使う場合は、上記のような外付けオーディオインターフェイスは必要ない。 前回紹介したRane社のMP2015や、次回紹介するNIのKontrol Z2などがオーディオインターフェイス内蔵機種です。
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また、Seratoで使用可能なオーディオインターフェイス付きミキサーの代表格は、パイオニアのDJM900NXS2でしょう。Traktorでもrekordboxでも使用が可能です。ある意味最強のミキサーです。
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DVSの利点と欠点を挙げておこう
利点
1. 荷物が少なくて済むこと。PCとオーディオインターフェイス(とレコード針)さえ持っていけば事足りる。レコードの運搬に気を使う必要がなくなる。
2. アナログレコードは使うたたびに溝がすり減っていくが、PC内の音楽ファイルは劣化しないので何度でも使える。
3. TraktorやSeratoを使うと曲全体が波形として視覚的に表示されるので、曲の全体像が把握しやすい。
4. 曲のLoopを即興で作成できる。
5. PCDJソフトウェアのFXやkeylockなどの追加機能が利用できる。
6. 曲の頭出しに便利なCueポイントを設定できる。
欠点
1. PCは、システムクラッシュなどでアナログ機材より音が止まる危険性が高く、PCが壊れたらアウト。
2. DJブースに PCを置くスペースが必要。
3. DJ交代時の作業が煩雑。
4. アナログレコードの音質と同じものは期待できない。
DVSは、スクラッチプレイを多用しレコードを酷使するHip Hop系DJにとっては、すでに必須の構成となっています。加えて、ハウス、テクノDJたちなどにも幅広く支持されているセットアップといえるでしょう。
ターンテーブルやCDJ不要のセットアップ (PCDJに特化した方法)
私がよく訪れる東南アジアのリゾートの野外パーティーでは、ターンテーブルの設置さえ手間だと考えられている。
(常夏ゆえに、暑さでレコードが溶けてしまうこともある。)
ターンテーブル(やCDJ)を取っ払って、リアルミキサー+PC(Mac)だけというDJも珍しくない。
上記図のようなDVSを用いないDJシステムもある。
この場合は、
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これがリアルミキサーを生かしたシンプルなPCDJシステムです。
TraktorなどのPCDJソフトを使えば、ピッチ合わせ(Sync)はPC内部で完結させることも可能なので、スクラッチなどのターンテーブルを使ったプレイを望まなければ、リアルミキサー+PC(Mac)だけでも上記図のような仕組みを使ってプレイをすることができる。
(もちろんオーディオインターフェイスは必須。)
特にハウスやテクノなどの規則性のあるダンスミュージックの場合は、事前の仕込みをある程度済ませておけば、タンテやCDJの操作による細やかなピッチ操作などを省くことができます。
また、小型のMIDIコントローラー(NIのkontrol X1など)を加えれば、ソフトウェア内の各機能の操作がよりスムースに操作出来るようになる。
Kontrol X1 MK2のようなアドオン・コントローラー(操作補助用コントローラー)を使えば、(ボタンやタッチストリップを操作することによって)CDJなどとほぼ同等なピッチ調整などの操作が可能になる。
スクラッチに関しては、ターンテーブルやCDJの方がもちろん有利ではありますが、全体的な操作性は、どちらも長所短所が混在しているので、ほぼ互角と言ってよいと思います。
また、上記図のようなDJシステムの場合、高価であるDVS用のオーディオインターフェイスを買う必要がないのも利点でしょう。
DVS用だと、ステレオ2in2out(アナログ4in4out)以上の入出力系統が必須ですが、
DVSを用いないシンプルなPCDJ用のオーディオインターフェイスは、ステレオ2outがあれば機能します。(入力機能は必要ない。)
(DVS用のオーディオインターフェイスの場合、レコードやCDJからの操作の信号を受け取るために入力系統も必要になる。)
例えば、DVS機能が必要なく、2デッキのプレイで問題ないなら、上記でも紹介したTRAKTOR AUDIO 2 MK2で十分機能します。
実はこのシステムの方がDVSより安定性が高いと言われています。
追記:
もし、4デッキ用のインターフェイスを探しているなら、Zomo MC1000 USB DJ MIDI Controllerがよさそう。(ただし現物を触ったことがないのでオススメとまでは言えません。)
なぜなら、発売当時は400ドルだったものが今だと110ドルほど。英国JUNOで買えます。送料を入れてもかなり安く買えると思う。
ステレオ4アウトのオーディオインターフェイスなので、手持ちのミキサーが4CHなら4デッキちゃんと使えます。アウトのみでインがないのでDVS用にはなりません。
そして素晴らしいことに、ほぼKontrol X1と同機能を備えたコントローラーでもあるので、これ一台あれば、とりあえず後は何もいりません。
ただし、安くなっているには多少の理由もあります。それは、ハードウェアのスペックが少々古い。ビットレートが16bit。上記の安価なTraktorのAudio2 MK2でも24bitです。大箱プレイはちょっとキツいかもしれません。使用範囲はホームパーティーから小中規模の箱までかと思います。
http://jp.juno.co.uk/products/zomo-mc1000-usb-dj-midi-controller/423272-01/?currency=JPY
DVSではないPCDJシステムの件に話を戻します。
下の動画のEan Golden氏のプレイが、まさにそのDVSではないPCDJスタイルの好例を示しているので参考ににしてみてください。
Ean Golden氏は、Mac内のTraktorを介した音源を、A&Hのリアルミキサー ( XONE:DB2 デジタルミキサー)とNative Instruments社製のTraktor専用コントローラー「Kontrol X1」を2台使って器用にプレイしている。
すでにTraktorによってビート同期(Sync)されたLoop素材を組み合わせ、traktor付属のFXや、リアルミキサーのイコライザーなど駆使しつつ独自のフローを作っていく。
上の動画のようなプレイの場合、ターンテーブルやCDJを必要としていないのが見て取れるでしょう。